当社PRFは、海外進出を支援しています。 今 ので、ぜひ最後までお付き合いください。
▼今回の連載ラインナップ(予定)
海外進出における『Born in Japan』の課題(本記事)
「Deel」の成功事例から学ぶグローバルスタートアップの成長戦略
「SORACOM」の海外展開から学ぶBorn in Japanのグローバル戦略
米国で創業した「Alpaca」に見る海外展開のヒント
日本の食品企業の海外進出事例から学ぶ~ローカライズが成功のカギ
Puzzle Ring Factoryのサービス概要 事業開発フェーズ
Puzzle Ring Factoryのサービス概要 組織・バックオフィスフェーズ
世界には200通りのルールがある。それぞれの障壁を超えるために~Xborder Connectリリースへ
それでは、さっそく第1回を始めましょう。
海外進出における『Born in Japan』の課題
1. 「Born in Japan」とは何か?
「Born in Japan」とは、日本で創業し、日本市場を中心にビジネスを立ち上げ、まずは国内で成長してきた企業を指します。下記スライド(図1)でも示したように、企業の生い立ちは大きく分けて「日本で創業するパターン」と「海外で創業するパターン」があり、それによってリソースや強み、そして海外進出の戦略・難易度・課題が変わってきます。

「グローバルユニコーン」の定義で見れば、アメリカや中国/東南アジアなど海外で創業したスタートアップが圧倒的に数を増やし、世界的な評価を得ています。それに対して日本発のユニコーン企業はまだ数が少なく、さらに「海外で大きく成功した事例」と言える企業は多くありません。
2. Born in Japanとグローバルユニコーンの違い
次のスライド(図2)では、典型的な「Born in Japan」と「Global Unicorn(海外で創業しグローバル展開する企業)」を比較しています。

日本のマーケット(GDP世界第3位)に慣れ親しんだ「Born in Japan」企業にとって、海外のルールや英語圏のビジネスカルチャーに合わせるというのは大きなハードルとなります。一方で、最初から海外で創業し、英語や多国籍メンバーを前提とした「Born in Global」アプローチは、海外展開に有利な部分がありますが、「日本の強みを活かす」「国内マーケットで安定的に成長する」といったメリットは相対的に薄くなるわけです。地の利が無い創業者が海外で創業するBorn in Global は難しさがあると言えます。(グローバルファーストを否定するモノではありませんし、ここまで順調にきているAnymindなどからは話を是非聞いてみたいところです)
3. スタートアップの海外展開における課題
では、「Born in Japan」企業が海外展開に踏み切ったとき、どのような課題が生じるのでしょうか。下記スライド(図3)は、当社Puzzle Ring Factoryが運営するの企業メンバーから取ったアンケート結果です。事業開始~1,2年目にかけては「顧客リーチ」「認知度向上」など0→1フェーズの事業開発が最大の課題として挙がります。さらに3~5年目以降になると「現地優秀人材の確保」や「資金調達」が徐々に重くなり、6年以上経過すると「コミュニケーション」「カルチャーギャップ」といった組織的な問題が顕在化してくる傾向が高くなっています。

主な課題例
0→1の事業開発(1~2年目)
顧客へのリーチ、認知度向上、顧客との折衝、成功事例を作る
人材確保・資金調達(3~5年目以降)
優秀なローカル人材の採用、海外事業を続けるための資金確保
組織運営・カルチャー統合(6年目~)
国際チームでのコミュニケーションやカルチャーのギャップ
グローバルスタンダードとの整合性
4. “Born in Global”が絶対に正解とは限らない
私は長年、外資系のスタートアップに身を置いてきました。そのため、かつては「最初から海外で創業する“Born in Global”や"Global First"こそが海外展開成功の王道だ」と考え、一般的な日本企業(Born in Japan)の海外展開モデルを否定してきたこともあります。
実際にJETROなどが中心にグローバルアクセラレーターを日本に承知し、Global Firstを実現できるようなスタートアップのアクセラレーションを加速支援しており、これは素晴らしい取り組みだと感じています。
しかし、実際に多くの日本企業や地方企業の事情を知る中で、日本での主流である「Born in Japan」の強みを活かした海外での成功モデルを作らなくてはいけないと感じるようになりました。
(1) 国内市場へのアクセスと安定性
日本はGDP世界第3位の大きなマーケットを持ちます。世界市場と比べれば今や決して大きくは無いが、ある意味グローバルから一線を画した日本市場で一定の売上・知名度を確立しつつ、海外へ段階的に展開するアプローチにはリスクヘッジのメリットがある。
(2) 日本人特有の職人気質・カルチャー
「日本ならでは」と評価される代表例が、製品やサービスの品質やきめ細やかさであることも多く、海外でも評価される日本の独自カルチャーとも言えます。海外からのインバウンド需要の多さもこうした価値観への共感が根底にあると感じており、グローバルの同じ舞台で戦う必要が必ずしもあるとは限らないという点です。
(3) 地方創生の観点での外貨獲得
とりわけ地方の企業やスタートアップにとって、海外への販路開拓は新たな成長エンジンになり得ます。国内だけでなく、海外からの売上(外貨)を獲得できれば地域経済が活性化し、雇用の創出にもつながります。例えば海外からのインバウンドの旅行者が増えていますが、ノマドワーカーなどが日本の地方にも訪れる中で生まれる人材の交流やそこから生まれるインスパイアが新たなグローバル展開企業の生み出すきっかけになるかもしれません。(こうありたいという私の願望も含まれています)
つまり、すべての状況において「Born in Global」=絶対的な正解、というわけではないのです。グローバル市場は確かに日本と比べ大きく魅力的で成長速度も速いですが、競合も激しく、コストも掛かります。まずは日本市場でしっかり実績や利益を得たうえで、海外へリソースを再投下するという選択肢があってよく、むしろ作り上げる努力をしていきたいと思うようになりました。
5. 「Born in Japan」から真の海外成功モデルを生むために
ここまで「Born in Japan」の強みと課題を見てきましたが、実際には海外で大きな成功を収めた日本発スタートアップはこれまで殆どありません。「国内市場で完結しやすい」「海外での事業化リスクが高い」などの環境要因もありますが、冒頭のグローバルユニコーンとの比較表でもあるように、創業者や従業員・法律/制度・言語・時差/ロケーションなどあらゆる面での海外との違いが難しさを生んでいることは間違いありません。そこでやらなくてはいけないことを考えてみました。
• 海外挑戦した企業同士の情報交換
失敗のリアルな事例や、成功シナリオを見つけ横展開し共有し合うことで、後に続く企業の試行錯誤を減らせるため、そのような仕組みが必要です。
• 地域や業種を超えた自由なネットワーク
製造業・IT・食品など、多種多様な分野の企業同士が繋がると、新たなコラボや発見が生まれやすい。また地方から海外の流れを作り出すためには、地域や国内外を超えた自由なネットワーキングが必要です。
• 海外人材・投資家・専門家との連携
国際感覚や現地ネットワークを持つ経験や専門性を持つ人たちが加わることで、海外事業の加速が期待できます。
私たちPuzzle Ring Factory(PRF)では、すでにBorn in Japanを中心とした50社以上のスタートアップと10社のVCを巻き込み、海外進出コミュニティを運営していますが、さらなる拡大を目指しています。そのための新たな取り組みとして、「XBorder Connect」の構想を進めており、より多くの企業・専門家、地域のプレイヤーが参加できる仕組みを整備中です。詳細は後日の記事で改めてご案内いたしますので、ぜひお楽しみに!
次回は、「Deel」の成功事例を通じて、海外を前提としたスタートアップの成長戦略を学んでいきます。海外進出を考える日本企業が得るべきヒントも多いはずですので、引き続きご期待ください。
Comments